<1>前書き
<2>インターネットとは
<3>方法



 介護保険の話題がマスコミに登場しない日はあっても、新聞にインターネットInternet(以下IN)の文字が踊らない日はありません。猫も杓子もINです。いまさら私が何を書いても、屋上屋を架すようで無駄な気もしますが、個人的にこんな楽しみ方もある、ということを 知っていただくことも無駄ではないと考えました。







 INとは何なのか、分かったようですっきり分かりません。inter(何々の中)+ netですから、ネットとネットを結んでいるネットワークなのですが、ようは地球儀に網を被せた状態を考えていただければ、一番分かりやすいのではないでしょうか。地球儀をすっぽり覆っているわけですから、実はどこがINの中心なのか、と尋ねられても良く分からないのです。もちろん発祥の地アメリカにもっとも多くのコンピューターが存在することは間違いないのですが、いったんINに繋がってしまえば、つまりは自分の居るところが世界の中心だ、と言っても過言ではないのです。これは非常に大切な点だろうと思います。


 今は亡き司馬遼太郎さんと、宗教学者山折哲雄さんの対談を先日テレビで見ていた時に、こんな話を山折さんが紹介していました。日蓮(1222〜1282)さんは安房国小湊の本当に名も無い漁村の漁師の子に生まれました。まさに辺境の地です。しかし彼はそこから切り返すのです。自分は本当に名もない辺境の地に生まれたからこそ、そこが同時に世界の中心なんだ、というのです。宗教学的な解釈は私には分かりませんが、日蓮さんは700年前にINの出現を予言していたのではないか、とこの話を聞いて私は直感したのです。実に怪しげな自分勝手な解釈なのですが、INを理解する上で大変示唆に富む話なのです。どんな辺境の地であろうと、自分のいるところが世界の中心なのだ、という考えは、かつては噴飯ものか、天才か狂人のたわ言だったでしょうが、現在ではINのおかげで実にリアルな響きを持つのです。


 そんなINですが、さまざまな利用のされかたがこれから考え出されるでしょう。まさに秒進分歩です。今回はインターネット・フォンInternet Phone(以下IP)と呼ばれるIN上での電話ソフトを中心に話を進めます。私が最初にこうしたIN電話に巡り合ったのは、雑誌の記事で読んだIPが最初でした。当時はまだバージョン3.0の時代で、使い勝手の余り良いソフトには仕上がっていませんでした。お試し版をやってみたのですが、決して実用に耐えるものには到底思えませんでしたので、そこで止めてしまいました。

  ところが、今年(96年)に入ってある雑誌で読んだWeb Phone(以下WP)というソフトをdownload(DL)、つまりこの会社のコンピューターから取ってきて試してみると、実に素晴らしい音質なのです。本当に驚くとともに、心底感激しました。お試し版は3分間だけしか使用できませんので、話が少し進んできた頃には切れてしまう情けない状態でしたので、さっそくクレジット・カードの番号を送って登録し無制限に使用できるようにしました。ところが、その後に今度はIPの最新版が出たことを知ったのです。さっそくDLしてみると、今度のバージョン4は3とは異なり、実に良くできているのです。まず音質が格段に進歩しました。自分の使用している音源ボードがSB16という種類ですので、full duplexつまり本当の電話のようにお互いが同時に話して聞く、ということはできませんでしたので、ちょうどアマチュア無線のように、「どうぞ!」と言ってお鉢を相手に渡すわけです。その後、ドライバーをDLすることによって、SB16でもfull duplexを使用できるようになったのですが、どうも安定しないようですので、現在でも「どうぞ!」を連発しているわけです。



 
さてこのIPとWPを使って、世界中の人にアンケートを取ってやろう、などと考えはじめました。ことの始まりは、朝日新聞96年6月12日の夕刊で、ジャーナリスト岡部一明さんの以下のような報告を目にしたことでした。


  『日本の電話料金は基本料金が月額1,750円で、市内通話は3分間10円。ところが、たとえばカリフォルニア州では基本料金が月額1,125 円(一ドル100円換算)で市内通話はタダです。国内最遠地への夜間通話は、日本の1分間30円に対して米国は10円。日本の市内公衆電話料金で全米にかけられます。日米間の国際通話は、日本からだと夜間の最初の1分が190円で、あとは1分100円なのに対して、米国の最安料金は24時間いつでも35円ほどのがあります。東京から静岡以遠の昼間の電話料金1分50円よりも米国からかけた方が安いのです。米国の市内通話がタダなのは、基本料金の中に固定料金として含まれている、ということからです。これがINでアクセスする際に非常に重要になってくる。サンフランシスコ市民は、他の予算が削減される中で、図書館の予算を直接投票によって1.5倍にしました。これによってデータベースを充実させ、無料で提供しています。自宅から図書館のカード番号さえ入力すれば、まったくカネをかけずに情報が得られます。』


 話には聞いてはいたものの、あらためてショックでした。たかが電話料金ごときに、などと軽んじてはいけま せん。情報化社会では電話料金はもっとも基本的な公共料金なのです。ある米国人は、アメリカ人にとって電話料金は水道料金のようなものだ、と言っていました。確かに、いま水道料金をいくら使っているなどと考えながら水道の蛇口をひねっている人は、まずいないと思います。アフリカの奥地ならいざ知らず、世界でもっとも豊かな国の一つなどと自負している日本が、実はある面ではとんでもなく立ち後れていることがあるのです。しかもそれは、社会の活力を生み出す根源の部分に関することなのです。たかが電話料金、されど電話料金なのです。


 INを利用する際に一番気をつけなければいけないのは、1分間いくらで安いよ、という広告です。INを本気でやろうとすると、単位は1分でなく1時間なのです。最近はINに接続するための業者ISP(Internet Service Provider)はかなり豊富となり、ちょっと過当競争気味ですから、そちらの料金はそんなに問題無いのですが、何といっても電話料金が恐ろしいのです。法人長者番付の第一位にNTTがランクされるのを見るにつけ、実に複雑な心境に私は陥らざるをえません。儲けていただくことは全く問題ないのですが、ことが社会活力の源に関することですから、NTTだけが笑いの止まらない状態というのはどんなものでしょうか。日本の将来を制する問題でもあるのです。アメリカでは電話業者が率先して、無料で全米の小中学校に光ファイバーを引こうという活動をしています。もちろんそれで将来にわたって自分たちを利用してもらうことにより、利益が入ることを計算しているにしても、実に遠大なのです。NTTが全国の小中学校に無料で光ファイバーをひく、などという話は聞いたことが無い。こんなことを私が書いている間にも、INについてささやかれている日米間の10年の遅れは、さらに開く一方なのです。


 まぁ、それはいいとして、こうして始めたIPが実に楽しいのです。世界中の人とリアルタイムでコミュニケーションができるというのは、本当にすごいことだと思います。なるべく偏らないように、さまざまな国から集計できるように配慮したつもりですが、結果としてはやはりある程度の偏りは致し方なかったようです。




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  質問は以下の15問でした。これを基本的には電子メールで送って返事をもらうわけですが、IPの場合相手が正式版の利用者であれば、その場でファイルを送ることができます。実に簡単です。voice mailと呼ばれる声のお便りも簡単に送れますので、相手が不在であれば、一定の親密さが確立されていれば、今度アンケートを送るから返事を頼むね、と便りを入れておけばOKです。電子メールで回答してくれます。

質問内容

表1

質問

1. 名前
2. 住所
3. 生地
4. 職業 
5. 年齢
6. インターネット歴
7. Internet Phone利用時間/一日
8. インターネット利用時間/一日
9. インターネット利用のための電話料金/一日
10. インターネット利用のための接続料金/一日
11. Internet Phoneでの友人数
12. 何カ国にInternet Phone友人がいるか?
13. Internet Phoneを楽しんでいてもっとも印象に残ったのは?
14. インターネットのもっとも素晴らしいと思う点は?
15. 一日に受け取るメイル数は?

こうして集まったアンケート結果は30通。

国別内訳

<結果>

表1

国籍 人数
1 Australia 1
2 Canada 5
3 Cyprus 1
4 Denmark 1
5 El Salvador 1
6 Hong Kong 1
7 Iceland 1
8 Norway 1
9 New Zealand 1
10 Singapore 1
11 South Africa 1
12 South Korea 1
13 Sweden 1
14 Thailand 1
15 UK 1
16 USA 9


 国別の内訳(表2)は下の表のごとくでした。内訳は16カ国でしたが、アメリカが多いのはどうしても利用者が圧倒的に多いので、繋がるチャンスも多くなるわけです。スペインやイタリアにも電話をしてみたのですが、スペインの人にスペイン語で喋ってくれ、と言われれば話はそこで終了となります。オーストラリアがようやく最後に一人送ってもらうことができました。


 実に面白かったのは、ある時かかってきた電話の相手に、「どちらから電話している のですか?」と尋ねたところ、「サイプラスだ。」というのです。サイプラスってどこの国か、ご存知ですか。『Cyprus [sa'ipras] キプロス:地中海東部の島からなる英連邦 内の共和国:女神Venusの生地という伝説がある。首都Nicosia』と辞書には書いてあります。そうギリシャ語でキプロスと発音するんですね。エーゲ海に浮かぶ島国キプロスは、そ ういえば昔、学校の歴史の時間に習ったような気がしますが、そんな国があったのですね。

  表2

 地図を見ていると、東地中海に位置し、北はトルコまで50ー60キロ、東はシリア、レバノンの沖合いという場所。『数十年に渡ってギリシャとトルコがにらみ合いの状態にある。南北が分断。』 またカナダに電話したとき、発音からしてどうもネイティブの人ではないようなので、「出身はどちらですか?」と尋ねると、「バルバドスだ。」というのです。バルバドスってどこにある国か知ってます?。メキシコ湾にありキューバから続く西インド諸島の端っこ。もうベネズエラに近い位置にあり、『人口26万2千人。1966年イギリスより独立、人口密度は一平方キロあたり600人以上と、世界で最も人口密度の高い国。宗教はプロテスタント。識字率99%。平均寿命76歳。現在失業率は高いが、比較的豊かな国。観光産業が砂糖産業を追い越しつつある。』




  引用は以下、NATIONAL GEOGRAPHIC: ATLAS OF THE WORLD:October 1995 Revised Sixth Edition(以下ATLAS)を用いました。それにしてもカナダにはなんて移民が多いのでしょうか。昨日電話したヨーロッパ系移民カナダ人によると、合計80カ国からの移民がカナダにはいるそうです。国土も広く、電話仲間によるとアメリカに比較して、人種差別や暴力事件が少なく、税金は高いがとても住みやすい、と言っていました。National Geographic誌、96年6月号にはトロントの特集記事が掲載されていますが、その中でCHINと呼ばれるラジオ局の事が書かれています。それによれば、32種類(!!!)の言語を用いた放送を流しており、執筆者が局のオーナーに、「今何語で放送しているのですか?」という質問に、「今何時だ? 。午前11時45分か。そうなるとクロアチア語だな。」という個所が在ります。またThe Death and Life of Great American Citiesの中で、著者であるJane Jacobsはトロントを、北アメリカで最も希望に溢れ健康的な街、と書いている事を紹介しています。


 トロントに住む香港からの30万人に及ぶ移民の実態を、先日テレビで放映していましたが、ベルリンの壁の崩壊によって世界中の隔壁は、事実上取り払われた感じがします。極端にいえば世界中どこへ行っても生活できます。「リベラルな民主主義プラス市場経済」は世界共通体制ですから。ただし、この市場で生きていくためには、やはり英語が必要です。共通概念を理解するためには、英語が必須条件です。バルバドスの彼も、母国における公用語が英語であったからこそ、カナダに移住する決心がついたのではないでしょうか。そうなると、日本語しか操れない私たち多くの日本人は、まず移民として国を出ることには、相当の困難が伴います。心しておきましょう。国を捨てる場合は、まずIPで十 分英語を鍛えてからの方が、後々楽なようです。

 またノールウェイに電話したときに聞いた話。ノールウェイにはどういう訳かパキスタンからの移民が3万人(不確かです)ほどいるそうです。ノールウェイは海底油田と天然ガスのおかげで現在とても経済は順調だそうですが、景気の良かったときに受け入れた移民が、どういう訳かパキスタン人だったそうです。パキスタンとノールウェイなんて、どう考えても結びつかないのですが、世界はまさにボーダレスなのです。




年齢など


 IN歴は一人が初めての日だったのを除くと、平均13ヶ月。年齢は平均39歳。残念ながら女性は一人もいませんでした。この世界は圧倒的に男性優位のようです。中学生の娘さんと話したことはありましたが、残念ながらうら若き女性の友人はできませんでした。ただ、Memphisの友人がパーティーをしていて、ちょうどその場に電話をしたので、遊びに来ていた女友達とは会話をすることができました。楽しい思い出です。






職業

表3
名前 職業
1 Andrew Ng media representation and consultancy(National Geographic)
2 Benny Rosenfeld Professional Musician, playing in the Danish Radio Big Band
3 Carlos Boton Work as an astrologer, and export business
4 Eddy Tsoi studying
5 Helgi Gardarsson I have a little Store-I drive TAXI
6 Horst Carl Certified Public Accountant
7 Ivin Greyling I study computer systems and I co-won a computer company
8 Jarle Carlsen Airline Captain
9 Jerry Eversole Manufacturing Engineering
10 Jim Lynch Computer Programmer/Analyst
11 Johan Barrebo a computer system engineer
12 Jon Hoglund Working as a nurse in hospital
13 Kelly Gomas retired computer professional
14 Kim Kwang-Soo graduate full-term student major in Electornic Engineering
15 Mario E.Flamenco I am a teacher in a high school
16 Martin Hollis Gun Repair Shop
17 Paul Millington dairy farmer
18 Peter Hrabinshky television reporter
19 Petros Souppouris Airline Pilot
20 Robert Heaps Carer
21 Robert Howard Internet Advertising
22 Robert Jones Air Traffic Controller
23 Romeo Lecca Electronics Engineer
24 Ron Wolney engineer
25 Sam Liu 衛星通信分野の独立コンサルタント
26 Sarawut Darnphetdamrong エンジニア
27 Scott Retired
28 Shifter a computer profession
29 Susanto Teh undergraduate student
30 Syed Ahmed Khamoor Jobless(waiting for permit in Canada)


 

 職業は表3の通りで、中にはカナダに住むパキスタンのカラチ出身の移民の人は、失業中なんて言っていましたが、失業中でもINを楽しんでいるのは、どういう訳でしょうか。まぁ、結構金を持ってそうな感じでしたし、政治的理由で亡命した、なんて言ってましたから、富裕階級の人なんでしょう。



 それと結構退職者という人が多いのです。日本的感覚から考えると、退職者がINを楽しんで悠々自適という姿は、ちょっと想像しにくい。いや、私が知らないだけかもしれません。たとえば50代終わりでIBMを退職しフロリダで余生を送りながら、好きな時に仕事をしている様子、なんて人もいます。本当に日本的風景からは想像しにくい光景です。


 またドイツに住む退職アメリカ人のDickさんとは、かなり親しい間柄になってきましたが、彼も軍関係の仕事で3年ほどドイツにいて、すっかりこの国が気に入ってしまい余生をドイツで送っています。先週はオーストリア、スイスへ旅行に行ってきた、と言っていました。退職者がなんでそんなに優雅な余生を送れるのか、あなたの奥さんは大金持なのか?と尋ねたら、大笑いをして、妻は教師をしていたがもう退職した、別に大金持でもなんでもない、と言ってしました。彼によれば、ドイツ人は音楽を生きがいとしており、どんな小さな町にもオーケストラがあり、子ども達も幼い頃から自然と音楽に接しているようです。彼の故郷の習慣では、花嫁の方が結婚式の費用を負担するため、自分の二人の息子の結婚式の費用に関しては心配が無く、社会に出てしまえばもう親として、自分達の余生を考えればよいそうです。若いときから、自分達の人生を設計しており、そのための貯蓄もしていた、だから今の生活ができるのだ、とのこと。彼によれば、近隣に住む韓国人達を見ていると、とにかく良く働く、朝から晩まで働きづくめだが、何が楽しくて生きているのか良く分からない、とのこと。もちろん知恵のある人ですから、直接的表現は避けたものの、結局日本人の事を指摘しているのでしょう。




 おそらく欧米の人たちから見た日本人の一般像としては、このあたりが平均像なのでしょう。日本は貧しい国でこれから豊かになる、のなら良いのでしょうが、少なくとも為替上は世界で有数の金持ち国ですから、どうもあくせくしているだけでは尊敬されないのでしょう。「Suke(これは私のニックネームです。Ryosukeというのはどうも彼らには発音しにくいようです。)、おまえもretireした後の事をしっかり今から考えておけよ。」なんて言われてしまいました。確かに日本では子どもの親離れ以上に、親の子離れが難しいのは確かなようです。


 

 コンピュータ関係の仕事についている人が多いのは、なるほどとうなずけます。IcelandのH.G.さんは小さなお店をしながらタクシー運転手をしている、とのことですが、ちょっとIcelandについて勉強してみました。種本はATLASです。「9世紀、古代ノルウェー人をこの国が出迎えたのは、氷だけでなく火山の炎だった。930年レイキャビクに設立された国民議会は、世界で最も古い国会である。国土の10%は氷河に覆われている。salmon fishingをしたくて世界中の釣り師がやってくる。人口26、8000人。識字率100%、平均寿命79歳。輸出品は海産物、羊毛」以上が簡単な紹介ですが、まずIcelandにゆくことは絶対ないでしょうから、貴重な友人ですね。アイスランドについては、原先生が原稿の中で触れられています。お読みください。





利用状況


平均一日IP使用時間は回答無しの二人を除くと、2.4時間。結構な時間です。ほとんどIN中毒みたいな人もいて、運動不足がますます加速するんじゃないかな?などと要らぬ心配をしてしまいます。私自身は、NTTのテレホーダイを利用しているため、また、区切りを付けるため朝の6時から8時まで、と決めています。テレホーダイは夜11時から翌朝の8時までは、月1600円?で無制限使用可能なのです。それでもいかに電話料金が高いかは、以下の統計からも明らかです。平均IN一日使用時間は4.0時間。仕事で利用している部分も入っているとは思いますが、かなりの時間です。これも繰り返しになりますが、電話料金などが無制限利用可能な仕組みでないと、とても恐ろしくて利用できません。






電話料金システム

 さてどれほどの利用料金を支払っているのか、それを知りたくてアンケートを取り始めたのですが、最低はもちろん大学で使用しているのでタダ、という人から、最高で月当たり100 米ドルまでばらついていますが、やはり定額料金制度のところが多いようです。きちんと回答のあった中では、定額料金制度を採っていなかったのは、Hong KongとSingaporeだけでした。米国では48州が市内通話定額料金制度を採用しているそうですので、電話代は気にする必要はないようです。




Internet接続料金

現在のところIN利用の際には、プロバイダーといわれるIN接続業者に加入するのが、最も一般的のようです。接続料金は以前に比較すると格段に安くなりました。ただし電話を繋ぐ場所、つまりアクセス・ポイント(AP)がどこにあるかで、電話代が全く違ってきますので、どこにAPがあるか確認してから加入するのがコツです。以前東京にしかAPの無い、定額性のプロバイダーに加入していましたが、電話代が恐ろしい額になり結局退会しました。東京に住む人は本当に得だと思います。これでは国土の均衡の取れた発展など、絵に描いた餅にすぎません。電話料金を東京からの距離に反比例するような料金体系をとれば、企業は黙っていても地方に分散するでしょう。




電話仲間の数

 一日中電話をしているわけにはゆきませんので、自ずと数は限られてきます。「君が初めての電話仲間だった。」という人から、ただ、「lots」とだけ回答してくれた人まで、さまざまでした。私の場合、コンスタントに週3回以上電話するのは、3人だけになってきました。朝の2時間だけですから、お互いの都合がそう合うものでもありません。こちらは早朝、むこうは夕方仕事も終わってうちで一息、という時間帯になるのが、たぶんベストでしょう。


  Memphisに住むRJさんとは、ちょうどこういう状態に近く、週4、5回は話をします。先日は2回目の離婚が成立したとかで、一時はずいぶんと落ち込んでいましたが、現在は元気一杯のようです。知り合って一週間ほどして、Memphisに関するパンフレットを山のように送ってくれたり、とにかく電話で話しをする限りは、典型的なopen-mindedなアメリカンという人です。離婚をすると財産は完全に折半になりますから、「今の家も売らなければならないだろう。」なんて言っていましたが、今のところは落ち着いているようです。依然別れたフロリダに住む妻と一緒に住んでいる娘の結婚式に招待されなかった、とずいぶんと落ち込んでいる時期もありました。しかし、英語でこういう時なんて言って慰めればいいんでしょうか?本当に自分の英語力の無さがいやになります。


  しかし時々飛び込みで電話をしてみて、本当にラッキーな出会いというのもあります。アメリカのSteveさんはGastroenterologistなのですが、「どこで研修を積んだ。」と聞かれましたので、千葉大だというと、「俺はOkudaという教授を知っているぞ。」なんて言います。奥田教授にはテニス部の顧問をしてもらっていたので、「よく一緒にテニスをしたものだ。」と言うと、「俺はアメリカで初めてOkuda needleを臨床応用したんだ。」なんて言ってました。本当に、「It's a small world.」です。



最も感激したことは?



  やはり世界中の人と、直接リアルタイムでコミュニケーションが取れるというのは、本当にすごいことだと思う、という回答が多かったようです。こうしたInternet電話は現在10種類ほどあるそうですが、私は4種類しか試したことがありません。最近マイクロソフトのNet Meetingを使用しましたが、音質はいまいち。ただし、その日の回線状態で、ずいぶん音質は変わりますから一概には断定できません。使い勝手もIPの方が勝っているようです。ただし、会議室つまり何人かの人で同時に平行して会話を進めることができるのは、役立ちそうです。

  エル・サルバドルのPNさんの返信メールには驚きました。「あなたと知り合えたこと!あなたは本当にいい人だ。」なんて書いてくれて、しかもお国柄でしょうか、パソコンの記号だけで描いた、キリストの磔の像を書き添えてきてくれました。こんなの初めてでした。スウェーデンのJBさんも、私の電話が初めてだったそうです。遠く離れた異国の人と、こんなに自由に話しができるのは本当に素晴らしい、と書いていました。







 さてこうしてアンケートの結果をまとめてみると、今さらながら現代の状況というものが、かつて歴史上に無かった事が分かります。特殊な能力を持つことも無い私のような人間でさえ、必要な機具を揃えさえすれば、家にいながらにして世界中の人と情報のやり取りをリアルタイムでできるのです。こうして30名の方とメイルのやり取りをしましたが、いまでも毎日のように連絡を取り合っているのは、2ー3名です。ドイツに住むアメリカ人Richard(60歳)さんと、テネシー州メンフィスに住むRobさんなどです。Dickさんは軍関係の仕事をしていた時に、3年ほど当時の西ドイツに住み、すっかり気に入ってしまったようです。現在は奥さんと二人で住み着いています。年齢から来るのでしょうか、大変知恵のある話をされますし、実際知識も豊富です。先日は奥さんの母親が亡くなったので、英国へ行くと言っていましたが、今週はスイス、オーストリアを旅行してくる、とも言っていました。退職者でなんでそんなに経済的余裕があるんだ、奥さんが大変な財産持ちなのか、と尋ねたら大笑いをしていました。どうも、私たちの社会とは仕組みが違うのでしょうか。私の得意の分野?イスラムの歴史について、語り合うことがあったのですが、語句の違いを指摘され、これは自分より一枚上手と悟り、いい加減なことは言えないと知りました。


 しかし、こうした寛大で心の広い彼のような人でさえ、どうしても意見の相容れない部分はもちろんあります。たとえば、中東問題などその最たるものです。私は中東の平和に最も大きな脅威を与えているのはフセインではなく、イスラエルによる入植地の拡大だと思っているのです。ちょっと常識のある人間なら、4千年前にイスラエルの民が住んでいた?から、あの土地はイスラエルのものだ、と言われて、そうですかと納得できる人間はいません。4千年前の話を持ち出して、力づくで他人の土地を取り上げるのが人の取るべき道とは、とても私には思えないのです。しかしDickさんとその話になると頑として譲りません。中東には民主国家はイスラエルを除いてない、あとの国々は人権は無視する正義はないなど、ろくな国はない、となるのです。確かにあたっている部分は多分にあります。王政をとっているサウジアラビヤやクエートが、欧米の基準で考えて民主国家とは言えないことは、私にも容易に想像できます。しかし、だからといってイスラエルが現在進めている政策が、正義に基づくものか、そうでないことは誰にでも分かることです。そんな彼が中国のチベットへの侵略を口を極めて非難するわけです。シンガポールのリー・クワンユーやマレーシアのマハティールが、欧米の基準でアジアを判断するな、という主張は実は核心をついているのです。自分達がさんざんユダヤ人を虐待してきた償いに、イスラエルという国を他人の土地に作らせておいて、アラブは独裁国家だ非民主的だ、などと非難することのいい加減さ、doble standardというのでしょうか、その2枚舌ぶりは驚くばかりです。こういった連中とわれわれは付き合っていかなくてはいけない。大変に気が重いのです。きちんと主張すべきは主張しなくてはいけません。もちろん、それで人間関係を損なうのはナンセンスですが、何でもにこにこ笑っているだけの日本人では、軽蔑されこそすれ尊敬などされるわけはありません。日本人が誤解されるのは、論争することとけんかすることの違いをきちんと教育されていないために、争いを避ける生来の性格から自分の考えをきちんと主張しないで逃げてしまうことから来るのです。これは良くありません。きちんとした論拠に基づいた主張は、決して避けるべきでなくむしろ積極的にすべきなのです。もちろんRicharさんとはその後にイスラエルの問題は話していませんが、その後彼に嫌われた様子はありません。2ー3日連絡が無いと、voice mailという声の便りが送られてきて、また話そうなんて言ってくるのです。60の男にそんなに気に入られても嬉しくないのですが、まぁ、いいでしょう。人生すべてこれ勉強です。そんな具合で、毎日電話をするわけです。

 それに比較すると、Robさんとの交流は気が楽というか、重苦しさがありません。ロック歌手エルビス・プレスリーが死んだ町、メンフィスに住む彼は管制官をしているのですが、本当に人がいいというか、いい意味でのアメリカンなのでしょう。知り合って一週間ほどして、メンフィス関係のパンフレットを山のように送ってきてくれました。スキャナーで読み込んだ写真を送ってくれて、自分の家、娘さんなどを見せてくれました。こちらもそれに答えなければいけませんので、さっそくデジタルカメラを購入して、寿司屋へ行ってはチラシ寿司などを撮って送ってあげたり、子ども達の写真を送ったり、沼津のパンフレットを揃えて送ったり、なかなか手間がかかりますが楽しいのです。





 Idaho州のDaveさんと初めて話をした時、「沼津は大阪からどのぐらい離れているんだ?」と聞くので、日本に来たことがあるのか尋ねました。普通、東京からどのくらい離れている、とは尋ねても大阪からどのくらいとは尋ねませんね。すると奥さんは日系三世だそうで、1982年に鳥取の実家へ遊びに来たそうです。彼の家は大きな農家で、3兄弟で住んでいるそうですが、子どもは学校へやらずに家庭で教育する、home schoolを実践しています。周囲には結構同じような人たちがいて交流があるので、集団生活で得られる経験にも問題は無い、と言っていました。16歳になる娘さんは大学受験資格試験、いわゆる大検のアメリカ版でしょうか、にも合格してみごと来年から音大に進学するそうです。日本からも何人か短期滞在で来ているそうで、興味があるなら連絡してこい、なんて言っていました。


 来年、RobさんとDickさんと私で、ドイツ、アメリカ、日本のどこか中間地点で会おうという企画を進めています。IN上では、ある意味で国境は無くなりました。ただし、そこでの公用語は英語なのです。本当に素晴らしい時代になりました。それを生かすも殺すも、利用者次第です。そして一刻も早く社会通信基盤を整備し、誰もが手軽に利用できるようにしないと、日本は本当に二流国になってしまうばかりか、高齢化社会を迎えて行き詰まる事は目にみえているのです。一刻の猶予もありません。われわれ平凡な一市民も、ことの重大性に早く気づくべきです。残念ながら、政治家はいまだに道路や橋を作ったり、駅を高架にするようなことばかりに気を取られて、これから世界で何が起ころうとしているかに思いが及びません。われわれ市民が突き上げないと、行政は何もしてくれません。事態は悪くなるばかりです。本当に日本はどうなるんでしょうか。



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