>>軟らかな資本主義<<

99年5月

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  4月7日放映のNHKクローズアップ現代「大企業を揺さぶる個人パワー」は、今話題のパソコン基本ソフト、リナックスを取り上げていました。パソコンも基本ソフトが無ければただの電器箱に過ぎません。利用者とパソコンの間を取り持つのが基本ソフト。アメリカ、マイクロソフト社のウインドウズが世界中で圧倒的シェアを誇っています。その独占状態に挑戦しているのが、リナックスなのです。私も3年程前から利用しています。

  もともとは、1991年当時学生だったフインランドのリーナスさんが、自分の余暇を利用して作り上げたものでした。彼はそれをインターネット上で、自由に改造してください、と開放したのです。当初5名の仲間から始まり、現在では世界中で一千万人近くが利用している、と推定されています。

   一方マイクロソフト社会長ビル・ゲイツ氏は、ウインドウズで7兆円を稼ぎだした、と言われています。世界一の大富豪、天才的経営者なのです。ごまんといる競争相手を次から次に叩きのめし、独占的地位を築きました。典型的な一人勝ちの物語です。無敵と思われてきたそんな彼に立ち向かっているのが、リーナスさんとその仲間達なのです。

   この物語の特異で素晴らしい点は、まず彼がソフトを無料で開放したこと、そしてインターネット上で全ての改良作業を進めたことです。リーナスさんを中心に世界中のプログラマー達が、24時間不眠不休の無料奉仕作業で改良を進めているのです。

   人は金銭的動機無くして真剣な仕事はできない、仕事としてなされないものなど、くずにすぎない、と誰もが思ってきました。趣味で作られたものに一流品は無い、とみんなが信じてきました。いま革命が起ころうとしているのです。金銭的動機でなく、単に自分が好きだから楽しいから、あるいは自分の関わった事が世界中の人の役に立つなら、それで幸せなのだ、という世界中の人々がインターネットを通じてこの活動に参加し始めているのです。

    冷戦の結果、資本主義は勝利を収めました。市場経済の名のもとに、アメリカを先頭に世界標準が渇歩しています。それはアメリカンドリーム、つまり弱肉強食の世界なのです。しかし日本の社会に、それは似合いません。アメリカ式のむき出しの資本主義でなく、公平さと効率性は追求しながらも、みんなが助け合って生きて行く、普遍性を持ったそうした資本主義を創造することが、21世紀日本が果たすべき役割ではないでしょうか。それが単なる夢ではないことを、リナックスの物語は私達に教えてくれているのです